マイクロストリップラインBPF付 1200MHzプリアンプの製作

今回は1200MHzのプリアンプを作ってみました。
以前に製作した1200MHzのプリアンプはキャビティ方式で製作し、NF も非常に低く良く出来上がったのですが、 やはりチップ部品を立体構成で作るのは困難です。そこで、今回は基板タイプで作ってみました。

1200MHz付近は携帯電話で使用されている周波数も多いので、基板上にマイクロストリップラインで BPF(バンドパスフィルター)を作り、比較的に狭帯域に作り上げました。

初段の FET には FHX35LG(富士通)を使用し、基板の材質は PPE の 0.6mm 厚で作り上げました。
バイアス回路はマイナス電源に NJU7660 を使用しています。

1200MHz BPF付きLNA基板

回路構成ですが、最初にマッチングセクションを設けて FHX35LG(富士通)につながり、 BPF を経由して MMIC に入ります。各部のラインはすべてマッチングを考えて作っており、 BPF は 1/4λ の共振回路で構成されています。

写真のとおりですが、NF:0.8、GAIN:35dB でした。
1200MHz帯での入力の SWR は 2.0 以下で、出力の SWR も 2.0 以下です。

1200MHz BPF付きLNA NF測定

GAIN: 35dB, NF: 0.8

1200MHz BPF付きLNA ゲイン特性

GAIN の特性も 1290MHz 付近で最大になり、狭帯域であることが分かります。

1200MHz BPF付きLNA SWR特性

設計帯域でのリターンロス(SWR = 1.53)も良好です。

プリアンプの基板はマキ電機のケースに収まるようにしましたので、流用が可能です。
今回もこの基板で数枚のプリアンプを作ってみましたが、ラフに作っても NF 0.8 以下、 GAIN 35dB 以上になるようで、定数さえしっかりしていれば再現性も良いようです。


基板を入手した方の為に調整法を解説します。

まず初めに基板に FET(FHX35LG)を取り付けます。FET は静電気に弱いので、取り付けには十分注意してください。
はじめに FET のソースをグランドパターンにつけます。このときハンダを十分しっかり付けてください。 その後にドレイン、ゲートの順に付けると良いでしょう。

基板をケースに取り付け、VCC と貫通コンを接続します。

電源を接続したら、各部の電圧を測定します。
・78L05 の出力側が 5V であること。
・7660 の出力側(5 番ピン)が -5V であること。

1) 調整は 20kΩ の VR でパワーが最大のところにバイアスを調整します。
このときドレイン電流が 10〜30mA でしたら正常です。ドレイン電流の測定は、 ドレイン抵抗 3.3Ω の両端電圧が 0.1V〜0.03V になっています。
もし値が大幅に外れているときは、FET のハンダ付けを見直してください。 それでも駄目なときは、FET を交換してください。

2) BPF の 10pF トリマーで最大ゲインに調整します。

3) FET 入力側のマッチングコイルを調整します。ゲインが上がるように少し変形させてください。
1〜3 の調整を何度か繰り返し、最良点を見つけてください。

コイルの調整ですが、幅を広げたり縮めたりして行います。おおよその幅が 2.5mm 付近が最良になるようです。

以上で調整終了です。FET は熱で出力が下がってきて NF も悪化しますので、放熱は十分行ってください。
また、入力電圧を 7V 程度まで下げるのも良いでしょう。

大まかな調整でも、GAIN 35dB 以上、NF 0.8 以下になると思いますので、ぜひ作ってみてください。

1200MHz BPF付きLNA 実装例

追加情報です。FET によっては発振が起こることが判明しました。
NF が少し悪くなるのですが、安定動作するために回路の定数を一部変更しました。

変更箇所はゲート、ドレインの抵抗値です。
・ドレイン側:10Ω に変更
・ゲート側:51Ω に変更

入力のコイル:幅を 7mm 位まで広げる。


更に回路定数を変更しましたので回路図を参照してください。
FET のゲート、ドレインの抵抗値、入力のコイル L を変更、BPF のトリマーを 5pF に変更しました。
更新:2004.07.30

回路図はこちらです(PDF)

2004.07.30(更新)