今回も三菱の Mos-FET パワーモジュール「RA18H1213G」を使用したパワーアンプの製作をしてみました。
パワーモジュールは下記の写真のようにモールドになっており、比較的に製作は簡単に出来ます。
パワーモジュールのスペックは下記の通りです。
RA18H1213G(三菱)
VDD:12.5V
VGG:5V(1mA)
Pin:200mW
FREQ:1.24~1.3GHz
MAX-POW:40W
このパワーモジュールは3段アンプ構成になっており、すべてMOSFETデバイスが使用されています。
ゲート電圧でパワーコントロールができる様になっており、5V 1mAと非常に少ない電流でコントロールが可能です。
GAINは23dB以上もあり、低入力でハイパワーが得られます。
また、アイドリング電流はVDD12V、VGG5Vの時に2A以上ありますので、注意が必要です。
参考に前回の簡易実験を下記に記載します。
実験に当たっては、アルミミーリングケースに回路を組み込み、内部に3端子レギュレーター(78L05)でVGG電圧を得ています。
入出力コネクターには、SMAJ端子を使用しています。
発振器には、無線機:TS-790G(CWモード)を用い、更に10dBのアッテネーターを挿入して電力を調整しています。
パワー計は HP437B + HP8481B で測定しました。
周波数:1295MHz
入力:150mW
電圧:13.8V
VGG:5V
出力:33W(ピーク)
無調整で、なんと33Wのパワーが出ました。
200mWまで入力電力を上げてみましたが、出力は殆ど変わりませんでした。つまり150mWでも飽和しているようです。
また、電流値が10A近く流れるので、かなりの発熱があります。
このモジュールはMOSなので、温まってくると当然パワーは下がってきます。
それでも放熱をしっかりすると、28W以上は出ているようです。
データシートによると、0.42℃/Wの放熱器が必要ですので、かなりの大型の放熱器が必要でしょう。
パワーを調整するには、ゲート電圧をコントロールするだけで簡単に出来そうです。
ゲート電流は1mAですので、簡単にVRでコントロールできるでしょう。
また、ドレイン電圧は12V位の方が、発熱が少なくてよさそうです(パワーは25W程度になります)。
計算しますと、効率は20%程度ですが、データシートの記載と同じようです。
周波数が低いほど出力が大きくなるようで、1280MHzではピークで40Wの出力も得られました。
このモジュールは入力電力が少なくて済むので、直下型アンプとか、自作の機器に用途は多彩で、放熱をしっかりすれば、多段合成でEMEアンプとして使用できると思われます。
前回までの実験で、シングルアンプ、パラレルアンプと順に実験を進めてきましたので、今回は4合成でハイパワーアンプの実験をしてみました。
前回の実験で、2合成アンプでも非常に発熱する事が解っていましたので、今回は更に大型のヒートシンクを使用しています。
ヒートシンク(放熱器)のサイズは 200×300×30mm です。
100W以上のアンプとしては少し小さめですが、クーリングファンで冷却をする事とします。
このパワーアンプの合成分配ですが、2合成アンプ基板を2枚使用し、更にウイルキンソンタイプで2分配・合成を行っています。
入出力の同軸リレーですが、アンプ入力は1Wまでと設計しましたので、入力側はオムロンのG6Yリレーを使用しました。
出力側ですが、ここは100W以上のパワーが通過しますので、業務アンプに使用されていた同軸リレーを使用しました。
電源OFFでスルーになるようにしていますが、最大通過電力は10Wまでです。
パワーアンプ基板への入力ラインには1.5D程度のセミフレキケーブルを、出力側には3D程度のセミリジッドケーブルを使用しています。
クーリングファンはケースのサイズから、60角のファンを2個使用しています。
実験の結果ですが、入力1Wで120Wのパワーを得る事が出来ました。(1290MHz CW)
周波数:1290MHz
入力:1W
電圧:13.8V
VGG:5V
出力:120W(ピーク)
電流:40A
4合成アンプでは電流が40Aも流れるので、やはり電圧がドロップしてしまいます。
電源線には5.5SQを使用しておりますが、まだ細いかも知れません。
また、内部の配線材、電源用リレー、ヒューズなどが抵抗分となり電圧降下させている物と思われます。
この辺は改良の余地がありそうです。
結果的には120Wもの出力が得られて満足ですが、EMEアンプとするには120Wでは少ないので、さらに8合成、10合成アンプと考えなければなりません。
もし、8合成アンプですと電流は80Aにもなると思われますので、電源対策は十分考えなければなりません。
また、合成アンプの欠点ですが、1個でもパワーモジュールが壊れると、アンプ合成のバランスが崩れて、すべてのパワーモジュールを破損する事になりかねません。
その為の対策も必要になりますが、1.2GHz用のアイソレーターは大型で高価ですので、アマチュア的には使用が難しいと思います。
また、スプリアスについても考えなければなりませんので、問題は多数有りそうです。
回路図
★★ 8合成アンプのレポートを頂きました ★★
パワーモジュールを8合成して、200Wオーバーを達成出来たとの事です。
下記の写真のように、作りも素晴らしくよく出来ています。
頂きましたレポートを記載させていただきます。
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頂きましたモジュールと基板を使用し作成した1200MHz8合成アンプ、何とか形になりましたので結果報告です。
当初の計画 Tr(下記)からモジュールに変更し「大飯喰らい」ですが、合成したパワーは簡単に素直に出てきました。
*この Tr MRF15090(MOTOROLA)は1.5GHz電話用90Wアンプで、調整で120W(Tr1ヶ)出ましたが調整が難しく、またデリケートで、トリミング中に「ご昇天」数個、欲張った追い込み厳禁の石で使い難く取り合えず変更。
写真1 工作部屋でテスト中の 8 枚 AMP、何と1Wドライブで200W出力!! 2Wでメーター右の針止めまで振り切れ。
電源は33A×2出力と40Aのスイッチング電源2台。
安全の為13.2V(モジュール近辺)でテスト中。
写真2 2Wまでドライブを上げた所、POWメーター振り切れ。250W以上は軽々出ている感覚です。
モジュールは2個1ユニットで70W強の出力、「4倍で280W」近くは出ていると思われます。
このPOWを通せるATTは有りませんので正確な値は計測不可。
4分配・4合成はそれぞれ違うタイプ(4分配=セミリジット50Ω分配、4合成=同軸管で作成)ともに超うまく行きました。
合成・分配共にフレキケーブルカットや合成によるトリミング(位相合わせ)は一切しておりません(個々の調整基板のまま)。
写真3 25cm×40cm×6cm高のヒートシンク付きケース(ヒートシンク→頂いた物をANT直下外箱に合わせ寸法カットし製作)
この大型ヒートシンクでもアイドル電流「何と32A」で熱くなります!!
POWを入れるとフィンの強制空冷&水冷でもかなりの発熱があり、WSJT ならば「うんとPOWを絞らないと」無理かも。
SSB、CW ではフルPOWでも問題ないと思います。(FULL で合計80A以上)
*BPFは10Wでは殆どロスが気になりませんが、このPOWですと大きくロスを感じ、またかなり熱くなります。今回は使用を断念!!