プリアンプの設置、製作について

この記事は記載途中です、個人的な意見も含まれていますので参考程度にお読みください。

最近、よくプリアンプについての質問を受けます。
今回はプリアンプについて記載したいと思います。

プリアンプとはアマチュア無線では受信感度を上げるために、アンテナとトランシーバー(受信機)の間に挿入するLNA(ローノイズアンプ)の事を言います。
ここではVHF〜SHFで使用されるプリアンプについて解説します。

プリアンプの設置場所について

プリアンプの設置場所ですが良い順に、

1.アンテナの直下
2.アンテナとトランシーバー(受信機)の中間
3.トランシーバー(受信機)の直前

つまりアンテナの直近に設置するのが一番効果的です。

これは、アンテナからプリアンプの距離があるほど、その間の同軸ケーブルの抵抗分とノイズ混入成分が合わさり、プリアンプで目的信号とノイズ分を加算したものが増幅してしまうためです。
これはNFの公式からも明らかです。

良質な信号(S/Nの良い)を取り出すためには、アンテナ以外にも同軸ケーブルの品質も重要です。
同軸ケーブルのシールドが悪いと、外部からノイズがケーブル内に混入し、ノイズ成分を増加させてしまいます。
ですから、S/N良く受信するには、2重シールド、3重シールドの同軸ケーブルを使用するとノイズ成分が減り、S/N良く受信できるはずです。

プリアンプとは

先ほど説明しましたように、プリアンプはLNA(ローノイズアンプ)です。
LNAに求められる要求条件は

1.入出力のマッチングが取れている事(SWRが低い)
2.NFが良い事(ローノイズ)
3.十分なゲインがある事
4.動作が安定している事

この4点は必須な事は誰でもわかります。

販売されている多くのプリアンプはGaAs-FETで製作されています。ここからはGaAs-FETで製作されたプリアンプについて記載します。
GaAs-FETはNFの低い非常に高性能なデバイスです。
しかしながら、実際にプリアンプに使用されているGaAs-FETは、主に10GHz帯用に開発されたものです。
これらの多くはBSアンテナのコンバーターユニットに使用するために製造されたものです。
その為に、10GHz帯では最高の性能を発揮できますが、それ以下の周波数ではNF値が良くてもインピーダンスは50オームにする事は非常に難しくなります。
専門的になりますが、GaAs-FETのデータシートのSパラメーターと「NOISE PARAMETERS」ノイズパラメーターを見ると判りますが、周波数が低くなるにつれて、 50オームにマッチングをとる事は非常に難しくなります。

V・UHF帯でNFを最良に持ってゆくと、入力のインピーダンスは大きく崩れ、50オームからかけ離れた値になってしまいます。
ちまたではGaAs-FETを使用した430MHzプリアンプで「NF0.2〜0.7dB」など、超低NFが記載された製品を見かけますが、使用されているデバイスのSパラメーター、 ノイズパラメーターを見る限り、かりにNF値が本当であってもインピーダンスは50オームから大きくかけ離れているのは明らかでしょう。

実際に多くの製品を測定した事がありますが、そのような低NF製品は出会った事がありませんでした。
それよりもインピーダンスが50オームから大きくかけ離れた製品が非常に多く、これではプリアンプを設置しても必ずしも良い結果は得られないばかりか、ノイズ増幅器となってしまうでしょう。
通常の製品では、50MHz、144MHz、430MHzでNFが0.2とか0.5dBとかはGaAs−FETのノイズパラメーターを考えると有りえない筈です。
考えてください、プリアンプは切替リレーとコネクター、同軸ケーブルとFETに到達するまで、多くの損失があります、それだけでも0.2dB以上の損失は必ずある筈です。
ですからプリアンプのNFは少なくても「コネクター、リレー、同軸ケーブルの損失+LNA回路のNF」になるはずです。
ではインピーダンスがかけ離れてもLNA回路のNFを良くした場合でも、その前までは50オームで来ているわけですから、整合ロスが生じるはずです。
ですから、製品としての超低NFプリアンプは存在しないはずです。

まれにですが、プリアンプのマッチングが悪くても、アンテナとプリアンプの間に起こる定在波の山が、偶然良いところになれば、良い結果を得られるかも知れません。
しかしこれは、アンテナとプリアンプ間の同軸ケーブル等がマッチングセクション(インピーダンス変換)として働いている為で、その変換効率(損失)については語られていません。
もし変換損失が0.5dBだとしても、NF0.3dBの製品はNF0.8dBと同等と考えて問題ないと思います。(実際ではもっと悪いと思います)

また、アンテナは50オームで性能を発揮できるように設計されています。多くの一流アンテナメーカーはSWRは必ず測定していますので、50オームと考えても問題ないと思います。
高性能なアンテナほどインピーダンスにはシビアになるはずです。そこにインピーダンスが全く違うものを接続したらどうなるでしょうか?
実際に実験で確かめた事は有りませんが、アンテナの性能を100%発揮できないのは容易に想像できます。

NFの測定について

最近ではオークション等で、高級品だったNF計(ノイズフィギアメーター)も10万円程度で購入できるようなりました。
しかし、NF計はNFの値は測定できても、インピーダンスの測定は出来ません。
そこで、間違った測定法で調整をしてしまうと、見かけ上NFの良い製品を作ってしまう結果になります。

NF計に使用するノイズソースは「ゲインが良くて、マッチングが悪く」なるとNFが間違って表示されてしまいます。
これはプリアンプのマッチングが悪いために、ノイズソースから出た信号が反射されてノイズソースに戻ってしまい、その影響で実際の値より、よい値が出てしまいます。
その為にNF計のみでプリアンプを製作すると、マッチングが悪い方に調整をしてしまうのです。
ほとんどの場合このようなプリアンプの調整をしてしまい、間違った数値になってしまいます。
昔のCQ誌などのアマチュア無線誌にも、間違った解説が多く掲載されているものがあり、製作記事が書かれています。

NF計は調整の測定機ではなく、製作した結果の測定に用いる機器で、NF計だけでプリアンプの調整をしてはなりません。
LNAの調整にはネットワークアナライザーが必須です。

インピーダンスが整合されていないLNAの測定には、ノイズソースにATT(アッテネーター)かアイソレーターを取り付け測定すると、インピーダンスが整合されてなくても その影響を少なくし、正しいNF値(近似値)を測定する事が出来ます。
ATTは3dB程度のものが良いでしょう、周波数に対応したアイソレーターを使用するともっと良い結果がわかります。アイソレーターを使用するときは、挿入損失を測定する必要があり、損失を補正しなければなりません。
さらに正確に測定するには、ノイズフィギアメーターのスペシャルファンクションを使用して、各部の損失、温度、条件を入力して測定しなければなりません。

簡易的にNF計だけでプリアンプの入力のマッチングを調べるには、ノイズソースにATTを挿入した時(ATT挿入でキャリブレートする)の測定値と、ATTを使用しないとき(ATT無しでキャリブレートする)時の測定値の比較で、測定値にゲインがあまり変化せず、NFに大きな変化があれば(20%以上)マッチングが正しく取れていないと思います。
これは実験からも明らかで、あるプリアンプではATT無しでNF0.7dB表示されたプリアンプが、ATT有りの場合NF3.0dBになりました。
またあるメーカー製ではNF0.3dBと表記でしたが、正確に測定しますと、NF1.5dB以上ありました
どちらもゲインに変化は無かったので、インピーダンスが大きく乱れた製品と思われます。

ノイズソースは校正をしなければNFの測定は意味を成しえません。
これはノイズソースのENR値がNF測定に非常に重要だからです。
古いノイズソースではENR値が大幅に狂っている事が多々ありますので、必ず校正しましょう。
校正は測定機メーカーの他に、NECファクトリエンジニアリング等などで校正サービスを行っております。

出力のマッチング

これ以外にも、プリアンプの出力のマッチングについても考えなければなりません。
入力側のマッチングは重要ですが、同じく出力側のマッチングも重要です。
これは同じように、出力のマッチングがあっていないと、プリアンプから出力された信号が、同軸ケーブルとインピーダンスの不整合をおこして、反射として戻ってきてしまうからです。
そうすると、プリアンプ(LNA回路)全体に影響を及ぼし、結果的にはNFを悪化させる原因になります。

これも、NF計では全く測定できるものではなく、ネットワークアナライザーで測定する以外は非常に難しいでしょう。

NFの低いプリアンプの製作は非常に難しく、簡単には製作できません。

プリアンプキットが多く販売されていますが、実際にその性能を発揮するためには、高価な測定機なしでは無理といっても過言ではありません。
多くの方がプリアンプの調整では、手元の無線機にプリアンプを接続して、弱い電波が一番良く聞こえる所に調整していると思います。
でもこれでインピーダンスは合っているのでしょうか?
たまたま、アンテナとプリアンプの間の定在波の良いところに調整をしているのではないでしょうか?
この様な調整では、実際にアンテナ直下に設置したときに良い結果が得られるはずは有りません。
私自身もアマチュア無線をはじめた頃は、色々な製作記事を参考にしてプリアンプを作ってみました。
しかし、いくら調整しても実際設置すると良い結果が得られない事が良く有りました。
今考えれば当たり前の事ですが、当時はわからなかったものです。
その後、NF計を入手して色々と製作を重ねてきました。しかし以前よりは性能が良くなったものの、釈然としない事が多々ありました。
これは、インピーダンスの事を十分理解していなかった事と、NF測定を十分に理解していなかった為です。
特にキャビティタイプのプリアンプは非常に難しく、入力側を整合させると出力側が狂ってくるで、最良点は中々見つかりませんでした。

最後に、LNA(ローノイズアンプ)は入出力のマッチングが重要です、これさえ良ければ多少NFが悪くても非常に良く聞こえます。
もちろんアンテナは十分な指向性がある物で無ければなりません。
無指向性アンテナにプリアンプは必ずしも十分な効果は期待できません。

通常の通信であればNFは2dB以下でも何ら問題ありません。
通信に実際に必要とされるNF値は、熱雑音、都市ノイズ、アンテナのNF(ゲイン、指向角)と大きな関わりがあり、単にプリアンプのNF値だけでは有りません。

このページを読んで頂き、少しでもプリアンプの製作の参考にして頂ければと思います。

まだ、このページは記載途中です。個人的な意見も含まれていますので、参考程度に読んで頂ければ幸いです。

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2008.10.20修正