今回は2400MHzのプリアンプを作ってみました。
1200MHzのプリアンプはキャビティ方式でNFが下がったのですが、
2400MHzでは、キャビティ方式ですとNFを下げてゆくと、どうしても
入力のSWRが悪くなってきます。
そこで、今回は基板タイプで作ってみました。
基板を作るにあたっては、当初の回路はセルフバイアス方式で設計したのですが、
どうしてもNFが下がりませんでした。
そこで、仕方なくバイアス回路で組み直しました。
マイナス電源には7660を使用しましたので、マキ電機のプリアンプ回路に似た感じ
になってしまいました。
基板は、これも当初はFR−4(ガラエポ)で作ったのですが、NFを追い込めなかった
ので、最終的にはPPEで作り直しました。
FR−4とPPEでは誘電損失が違うので、PPEの方がNFがやはり良くなりました
ね。
パワーアンプでは、誘電損失はあまり気にならないもですが、0.1dBを気にする、
プリアンプではかなり違ってきます。
また誘電率も違うので、導損も少なくなります。
これはPPEの方が誘電率か小さいので、同じ基板厚でしたら50オームラインが太くな
るためです。
PPE基板は0.8mm厚の両面基板で、銅箔厚は18ミクロンです。
誘電率は3.2程度です。
基板の設計には、フリーソフトの「PCBE」を使い設計しました。
フィルム製作にはサンハヤトのインクジェット用フィルムを使っています。
エッチングは両面基板に、スプレー式の感光液をつかい、エッチングを行っています。
エッチング終了後にサンハヤトのスルーホールキットで簡易スルーホールを作っていま
す。
回路ですが、最初ににマッチングセクションを設けて、FHX35LG(富士通)につな
がりその後、ミニサーキットのMMICに入ります。
各部のラインはすべてマッチングを考えて作っております。
写真のとおりですが、NF:0.78 GAIN:38.7dBでした。
2400MHz帯での入力のSWRは3以下で、出力のSWRも2以下です。
GAIN:38.7dB,NF:0.78
GAINの特性も2400MHz付近で最大になり、理想的なカマボコ型になりました。
基板タイプのプリアンプは5種類ほど試行錯誤で作りましたが、NFが良くなるときは
カマボコ型のGAIN特性になりますね。
これは、キャビティタイプでも同じ結果になりますよね。
設計帯域外で、大きなGAINがある時は、発振かマッチングミスです、入力のリターン
ロスを計測すれば推測がつきます。
設計帯域でリターンロス(SWR)が下がっていれば(谷になっていれば)、問題ありま
せん。
以前に私が失敗したように、NFだけで調整してゆくと、SWRが非常に悪くなって行き
ます。
特に基板で作ってゆくと、全く違った帯域でGAINが出てきますが、やはりマッチング
のミスです。
プリアンプの基板はマキ電機のケースに収まるようにしましたので、流用が出来ます。
何度かこの基板でプリアンプを作ってみましたが、ラフに作ってもNF1.0以下、
GAIN30dB以上になるようで、定数さえしっかりしていれば、再現性も良いようです。
但し、キャビティのように、共振セクションが無いので、かなりの広帯域特性になりますが、
デバイスの能力が高いので、かなり強い帯域外の電波を受けても、影響は少なそうです。
2段目もMMICでなくてFETにすれば、さらにNFが下がりますが、マッチングが難
しくなるので、今回は諦めました。
もう少しNFの低いMMICがあれば楽なのですが・・・
ところで、NFの低いデバイスですが、いろいろと調べてゆくと選定はかなり難しいようです
。
入手の問題も有りますが、大抵のFETは10GHz帯用に作られていますので、かなり周波数の外
れた2.4GHz帯ではマッチングに苦労します。
Sパラをみて、パワーマッチすれば問題ないのですが、NF最良にマッチングを持ってゆ
くと、50オームからは程遠くなってしまいます。
GAIN最良でのマッチングでしたら、50オーム近くになるのですが、NFはかなり悪化
します。
さらに、デバイスのKファクターも考慮しないといけませんね。
私感ですが、入手できるLNA用のFETでは、FHX35LG、FHX76LP、NE3210S
01等が有りますがやはりFHX35LGが作りやすいですね。
FHX35LGですが、ドレイン−ソース間電圧は2V、ドレイン電流は10〜20mA程
度がNF最良になるようです。
これは、1200MHz、2400MHzでも同じような結果でしたので、もし手持ちの
プリアンプがある方は、調整してみると良いと思います。
あと、電源ですが、レギュレータのリップルは十分に少なくした方が、好結果ですので、
私は電解コンデンサーには100マイクロファラドを使っています。あと回路上でもリップルを無くす
工夫が必要です。
このプリアンプはGAINが35dB以上も有りますので、アンテナ直下に使えば、かな
り長い同軸ケーブルでも総合NFが悪くならずFBです。
もし、5D−SFAを20m使うと、2400MHzではロスが6dB以上もありますので、
もしプリアンプ無しでしたら、アンテナ利得は1/4にNFは6dB悪くなります。
ですから、プリアンプの使用はかなり有効です。
コスモウェーブから基板、パーツ付基板、完成品を販売してもらうことになりました。
そこで、基板を入手した方の為に調整法を解説します。
パーツ付基板の製作例です。
まず初めに基板にFET(FHX35LG)を取り付けます。
FETは静電気に弱いので、取り付けには十分注意してください。
はじめにFETのソースをグランドパターンにつけます。このときハンダを十分しっかり付けてください。
ドレイン、ゲートと付けると良いでしょう。
基板をケースに取り付けます。VCCと貫通コンを接続します。
電源を接続したら、各部の電圧を測定します。
・78L05の出力側が5Vであること。
・7660の出力側(5番ピン)が−5Vであること。
調整は20KΩのVRでパワーが最大のところにバイアスを調整します。
そのときにドレイン電流が10〜30mAでしたら正常です。ドレイン電流の測定は、ドレイン抵抗10オームの
両端電圧が0.1V〜0.3Vになっています。
もし値が大幅に外れているときは、FETのハンダ付けを見直してください。
それでも駄目なときは、FETを交換してください。
そのご、FET入力側のU字コイルを調整し、ゲインが上がる用に少し変形させて調整してください。
以上で調整終了です。
FETは熱で出力が下がって来て、NFも悪化しますので、放熱は十分行ってください。
また、入力電圧を7V程度まで下げるのも良いでしょう。
大まかな調整でも、GAIN35dB、NF1.0以下になると思いますので、作ってみてください。
キットを希望の方はこちらまで、ご質問もフォームでお願いします。
回路図はこちらです(PDF)
購入はコスモウェーブ・オンラインショップ
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